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楠の会だよりNo.283号(2026年1月)記事よりあたらしき 年の初めに 思ふどちい群れて居れば 嬉しくもあるか (道祖王⁼ふなどおう) 「親は何もしないで待つのではなく‥‥」 新年おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて早速ですが、先月の会報で、「親はいつまで待つのですか」という親の嘆きとも言えそうな疑問を掲載しましたが、皆様はどのように思われたでしょうか。池上正樹氏は「何もしないでいいと言う訳ではない、本人が家に居ても居心地の悪さを感じない安心安全な家族関係を作ること」と答えました。家族からの受容が、本人の社会参加の意欲を促すということです。しかし私たちはこれだけで十分だろうかという疑問を持っています。 そこで、斎藤環先生のお言葉と私たちが長年の経験の中から得た情報をもとに、今ぶつかっている難問、どうして長期化するのかについて、その要因を考え、できればどうすればいいかも考えてみようと思います。(“ ”は斎藤環著「中高年ひきこもり」よりの引用) 〇ひきこもりは、自力で治ることはない(斎藤環先生) 私たちが昨年皆様にお願いしたアンケートを集計した結果で表れていたことですが、家族会の効果として親子の関係性は改善している様子がわかりますが、さらに一歩、家族以外の第3者に繋がっていない家族が意外に多いことがわかりました。斎藤先生はひきこもりは自力で治るかという質問に、“抜け出すには家族以外の第三者の関与が欠かせない。”と明言されています。しかし、“当事者本人には「このままではいけない」という自責の念があるので、「自力で何とかしよう」と思っている人も少なくはなく、しかし、そう思うことが逆に解決を遅らせる要因にもなっている。「自分で何とかしたい」は「人の力を借りたくない」でもあるからです”と言われています。 先々月号の会報にも出した斎藤環先生の提唱された、〔社会〕〔家族〕〔個人〕の関わり方の模式図を思い出してください。世間体を気にして隠そうとしたり、第三者に相談せず自分だけで解決しようと考えたりして問題事態を抱え込んでしまう図が、三つの輪がまったく接点を持たないがひきこもり家族ですが、この状態は膠着状態に陥り、長期化しやすくなるシステムなのだと先生は言われています。 〇親が社会に通じる「トンネルの穴」を開けていく 親子関係がそれなりに良好になっているのに、社会へのつながりが進まないのはどうしてだろうか、という疑問をもう少し考えて見たいと思います。ここ数年間を見ていて思うことは、子どもに親の影響力が及ぶのは、親の本気度または、行動力によると言っても過言ではない気がしています。口先で指図、誘いかけは反発を食らうだけで効果がないことは勿論です。ある例では、お母さまが支援先を探し、長い間息子さんに同行されていましたが、今では息子さんは仕事に興味を持って通っておられるようです。 誤解を恐れずにお話すれば、会の仕事を引き受けて下さったスタッフの方々の当事者は高い確率で社会参加を果たしておられます。土の中にトンネルを掘って外界に穴をあけたモグラ?ならぬ親の通路を、おそるおそる後ろから通ってくるような姿を想像してみてください。ほかに親が講演会や情報収集に動き、適当な時期に本人を促して、支援者や医療へ導いていったところが社会参加を果たしていらっしゃいます。 〇欲望を枯渇させないために一定額の小遣いを与える 斎藤先生は言われます。”説教をすると不安になるなら何も言わずにほおっておけば安心するだろうと考える親もいますが、誤解です。ほおっておかれると彼らはますます不安になってしまう。何故なら自分で生活していく術を持たない当事者が一番心配しているのは、いつ親から見放されるかだからです。その不安を解消する手段は、二つしかありません。<対話>と<お金>です。小遣いを与えなければ働くだろうは本人を不安にさせるだけなのでお金は与えるべきです。お金がなければ働くだろうではなく、仕方がないからお金を使わずに暮らそうとなってしまうのです。その結果、毎日ただ食事をして寝るだけの、欲のない人になってしまいます。” ”ひきこもりを長期化させる要因としてはこれが一番おそろしい。お金は欲望の種なので、それがないと欲望そのものも消えてしまいます。欲がなければ社会参加しようと言う意欲も生まれません。「お金がなければ働く気になるだろう」はあり得ない。ただし一定額月給制にすること”と。 〇親がやるべきこと、本人に家事を覚えてもらうこと斎藤先生は、親は子どもに「仲の良いお友達のお子さんを預かっているような感じ」で接するようにと言われていますが、私たちは結構子ども扱いを続けていないでしょうか。掃除、洗濯、食事の世話を自分でやるようにしているでしょうか。病人や小さな子どもではないのですから、親亡き後を考えれば一人で家事をやれるように、機会を見て少しでもやってもらうよう心がけてみませんか。 〇夫婦の対話がない場合は? (斎藤環先生の言葉) “ひきこもっている本人からすれば、両親はワンセット、信頼関係を築く相手は、どちらか一人ではありません。夫婦が一致団結して同じ方針を共有すること。但し「どうでもいい会話」ではなくお互いの考えていることを深く掘り下げて話し合ってみる必要があります。” 〇ひきこもる本人の回復過程 長期化の一つの要因として、本人の個人療法がおろそかになっていないでしょうか。今一般的に行われている支援は、本人をいきなり集団療法やソーシャルワークに繋げようとしているように見えます。 医療を嫌う本人が多いので、個人療法を受ける機会がありません。この点で精神科や心療内科、カウンセリングが大きな役目を持っているはずですが、それが使われていないと言うことに問題点が見えます。彼らが自ら足を向ける、個人療法が可能なところが欲しいです。今斎藤環先生はクリニックを開き、オープンダイアローグをやっていらっしゃいますね。 〇本人が集団に参加する必要性と意味について三項目 ・一つ目は、親密な関係を通じて承認欲求を満たすこと 今の人たちはお金が要るからではなく、承認欲求を求めて就労する。 ・二つ目は、欲望の回復。「欲望は他者の欲望」→意欲や欲望は他人からもらうもの ・三つめは、広い意味での「社会性の獲得」 以上は、近頃忘れていた親の学びの復習として取りあげてみました。また来月富田伸先生の講演会を予定しています。 (吉村) ========================= <今年の抱負1 親の価値観を押し付けない> 私は8050問題の当事者の親ですが、今年は戦後81年、戦後の物資のない時代に育った世代です。思い返すと経済発展と右肩上がりの希望の持てる良き時代であったと思います。 三種の神器と呼ばれた電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビが普及し、のちにカラーテレビ、クーラー、自動車もそう呼ばれるようになりました。生活を豊かにするものを得るために稼がなくてはならない。いろんな商売、仕事も豊富にあり、時代が躍動していたように思います。 今足元を見ますと、バブル崩壊以来、失われた30年と言われて、まだその記録が伸びているように思います。ところが今物は有り余るほど豊かにあり、テレビの番組はどこもご馳走のオンパレード。時代は確かに大きく変わりましたが、よくなったのか悪くなったのか私にはわかりません。 私自身、人はしっかり働いて稼いで自立することを願う気持ちはかわりませんが、ただ時代は変わったのも間違いないと思います。こどもに価値観の押し付けはできないし、しないつもりです。親がこどものことを思い悩むことはなるべく避けて、本人の自覚を待ちたいと思います。 私たち昭和世代もそれなりに苦しいことや困難に遇ってきましたが、何とか切り抜けてきました。カウンセリングなどはないので、時々人生訓など思い起こしながら。「とらわれず こだわらず、こころを静かに澄ます」、般若心経で言う「空(くう)」、「君子の交わりは淡き事水の如し」とか言っていました。こんな教訓は今時の若者には効果はないのでしょうかね。(会員S・K) ) ========================= 今月は他にも素晴らしい投稿記事があります。ぜひ「楠の会だより」をご覧ください。 なお、当ホームページに「楠の会だより投稿」のサブページを設置しました。 こちらの方もご利用ください。 投稿の一部を掲載しています。→楠の会だより投稿 ========================== 福岡「楠の会」支部会だより数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、「楠の会だより」をご利用ください。★福岡の集い 12月16 日(火) 14: 00~16: 00 (あすみん) 参加者 5名 (男性 2、 女性3 )〇 いつものメンバーですが、お父さんの参加はほかの支部ではめったにないこと、この支部会の特色です。近頃どこの支部会でも親と子の関係はかなり良くなってきているように見えますが、外部の社会との接点がないことが問題として出ました。〇 お嬢さんがケーキ作りに熱心だという方は、ちょうどクリスマスも近い昨今、ケーキの材料のことや手順などの会話で、もっぱら親子のつながりが続いているとのお話でした。 〇 数種の趣味の会に出席しているという多趣味のお父様は、本人への心配はすごく薄らいでおられる様子ですが、やはりいろいろ支援先を紹介しても本人がその気にならないことが気がかりでいらっしゃるようでした。 〇 お仕事を持っておられる、あるお父様は、障害年金を持っているご本人のことについて、これから先どう生きて行けるかを問題視されておられました。 少しずつ問題を明確にしたうえで情報を集め、何か突破口を探していきたいと思っています。 ( Y・F ) ★宗像の集い 12月 17日 (水)13: 30~16: 00(メイトム宗像 ) 参加者 6名 (女性 5 、男性 1 )1. 親子でひきこもり...追い詰められた背景は? 母の苦悩 & 子の想いを聞く (36分視聴)息子は25歳で仕事を辞めてそのまま外出しなくなった。母が息子に、30歳を過ぎると仕事が無くなる、世の中に馴染めなくなるなどというたびに、息子は嫌な顔をしてだんだん近づかなくなったという。 家庭内の事情や職場の状況などが重なり母親自身も世の中全体が怖くなり、結局親子どちらもほとんど外に出られない引きこもり生活を3年ほど続けることになった。 母は、かつては「みんなで楽しくやりましょう」といった感じだったので世の中が怖くなるということなんて想像もつかなかったと話している。 そんな生活ののち、入院中の友達のお見舞いをきっかけに再び外出できるようになり、現在は二人とも引きこもり状況を脱出している。 親子ひきこもり生活を振り返り、「ひきこもって良かった。自分がひきこもったことで息子のつらさを理解できた」と話す。 2 みんなの声 ○ Aさんは、「ビデオのお母さんは友達の入院見舞いがきっかけで引きこもりを脱出したと話しましたが、楠の会の集いに出ることも親のひきこもり防止につながると思います。私は、集いで皆の話を聞くことで親もつらいけれど、本人が一番つらい思いをもっているということも知ることができました」と話しました。 ○ Bさんは、息子さんの確認癖が強いことについて悩まれていて、「継続して相談出来る方がいらっしゃればいいのに」と話されてました。 ○ Cさんは、いつもは息子さんと2人暮らしですが、別居されていたもう1人の子供さんが数ヶ月間同居することになり、息子さんの様子が少し変化したそうです。 ○ Dさんは次のように報告されました。 私の次女は20年近くひきこもっていました。令和4年に通院し長い長い道のり(いろんな事がありました)を経て、やっと11月にB型作業所の体験に行く事ができました。まだまだこれからですが……少しずつではありますが、前進しているのを見て今は私も気持ちが少し楽になっています。 長女が、いつも病院の送迎をしてくれています。次女は言葉には出しませんが感謝はしていると思います。ただ、ありがとうの一言が言えません。 先日次女は、長女の誕生日に初めてお小遣いでプレゼントをあげました。私も長女も「そういう事考えてくれていたんだな」と2人して驚き、何より嬉しかったです。私にとってこの日は幸せな1日でした。 ( F.S ) ↑楠の会ホームページトップへ |