■楠の会だより投稿文の紹介■


1秒でも長く生き延びること
              福岡県立大学 四戸智昭

新年あけましておめでとうございます。
新しい年を迎えたものの、私の危機感は増すばかりです。
というのも、川崎の登戸に端を発した一連の事件。
特に元農政事務次官の長男殺人事件について、裁判を通じて事件の詳細が報じられても、なお私たちの社会は、そこから肝心なことを学ぼうとしてくれないからです。
それどころか、「引き出し屋」と呼ばれる偽のひきこもり支援の看板を掲げたビジネスが横行しています。
ひきこもりを抱えた家族から金をしぼり出し、当事者を脅して部屋から引きずり出す。
その上、ろくな支援もせず当事者は死亡しました。(西日本新聞 「扉の向こう–引きこもり支援の今(上)(中)」2019年12月16日、「同上(下)」、2019年12月17日)
どうして「引き出し屋」のようなビジネスが横行してしまうのか。
これについては、元ひきこもり当事者で、私の家族支援活動のパートナーである、こだまこうじ氏がとても鋭い指摘をしてくれました。 是非そちらをお読みください。(※)

さて、私は一昨年に福岡で開催された第29回日本嗜癖行動学会で「ひきこもりの表層と深層を架橋する」という報告をしました。
これは、不登校の子や、ひきこもりの人、また家族が抱える生きづらさについての報告です。
この報告の中で、病んでいるのはひきこもりではなく、生産性と偽りの多様性という幻想にとらわれた社会であると指摘しました。
‥‥‥(省略)…
必要なのは、本物の多様性です。不登校は学校に登校する事がゴールではありません。
ひきこもりは、就労する事がゴールではありません。
色々な形、そのままひきこもる。ちょっとだけ家族と会話する。ちょっとだけ家事をする。ちょっとだけ散歩する。ちょっとだけバイトする。色々でいい。困難な時代、大切なことは1秒でも長く生き延びること。できれば笑顔で。それは、ひきこもりも、ひきこもりでない人も、おんなじ。

ひきこもり体験者の生の声を知ってもらうことが必要と思い、こだまこうじ氏を紹介します。
社会からはじかれた体験者だからこそわかる考えや意見を知ってもらい、多くの人がこれまでの社会の当たり前を考え直すきっかけになって欲しいと思っています。
‥‥‥続きは楠の会だより112号をご覧ください。

※ひきこもりサバイバー こだまこうじ
(1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住)
中学時代いじめ被害、高校で不登校に。
その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。
周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。
4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。
2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。
自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。




「ちくご地域ユースサポート」の一年間を振り返って
               下川展弘

あけましておめでとうございます。
「ちくご地域ユースサポート」(以下、CYSという)は、平成31年3月10日に設立集会を行い、「不登校」や「ひきこもり」で生き辛さを抱えた当事者や家族への支援を中心に、関係団体とのネットワークも図りながら活動を行っています。
CYSの対象者は主に“ちくご七国”(筑後市、八女市、みやま市、柳川市、大川市、広川町、大木町)地域に住む当事者と家族です。
日常的には、当事者や家族が楽しめることを中心に、農作業・加工品づくり(販売)・料理教室・当事者会(精神障害)・家族支援・学習会等を行っています。
対外的なイベントとしては、関係団体や地域住民との合同でBBQパーティー・忘年会を行ったり、CYSを会場にして不登校当事者及び家族「ひまわりの会」のメンバーが中心で「不登校は不幸じゃない」全国100ヶ所一斉イベントに参加しました。
成果として、1年間ひきこもっていた息子さんがひきこもりから脱したことから、その親御さんと当事者である息子さんが、別のひきこもり当事者及び家族の支援を行われるといった状況が出てきたり、親子間のふれあいが増え、関係が改善したり、家庭の中が明るくなるなどの変化がみられてきています。
また、市議会から数人来所していただき、9月議会において「ひきこもり」「不登校」支援対策等についての一般質問を行っていただきました。その結果、当施設についても周知していただく機会ともなりました。
今後は、ひきこもり当事者の想いを大切にして「当事者の会」の立ち上げを支援し、活動を行っていくことを計画しています。
そこで、CYSでは関係団体や地域の様々な人材との連携も図りながら、「当事者自身が自分で選択し、決定する」過程を一緒に考え、サポートできる体制作りも考えていきたいと思っています。