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< 本の紹介 「わたし生活保護を受けられますか」>
 

たびだち101号「生活とお金」特集で生活保護について少し解説する記事がありました。
興味を持ち、最近出版された「わたし生活保護を受けられますか」という本を読んでみました。

著者の三木ひとみさんは特定行政書士の資格を持ち、2016年以来10,000人以上の生活保護を受けたい人へのサポートをしてきた人です。
そのモットーは「生活保護のサポートは1日たりとも休んではいけない」です。
その思いの源は、二十歳過ぎの頃、ストーカー被害にあい幼い一人娘を抱えてシェルターに逃れ、職も家も失った頃知人に勧められて、すがる思いで生活保護の窓口を訪れましたが、冷たくあしらわれた経験にあります。
生活保護は無理なのかとあきらめ、電車に身を投げることを考えて徘徊しているとき、娘さんのために頑張りなさいの声に励まされ、一流会社の社員から一転、水商売をしながら勉強し、行政書士になりました。
そして分かったことは、当時門前払いにあったことは不当な行政行為であったということです。
親の経済力に関わらず、現に今生活に困窮しているのであれば、誰でも平等に憲法に保障された最低限度の生活が保障されなければならないのです。
だから、今困窮している人が生活保護を受けるに際して不当な扱いを受けることが無いように、行政書士の立場から、1年365日休むことなく、サポートを続けているのです。
1日3食を取る生活が送れていないのであれば、生活に困窮した本人が現に寝泊りをしている場所を管轄する生活保護担当窓口(社会福祉事務所)に出向き、決して諦めないで生活保護を申請してくださいと著者は言っています。

生活保護を受けるのは難しいと私は考えてしまいますが、沸き上がってくるいろいろな疑問に丁寧にこの本は答えてくれます。
生活保護の要件は、利用しうる資産・能力などは生活保護に先立って活用することだと言っています。
資産については、生活に利用されていない土地・家屋があれば売却等し、生活費にあてる事となっています。
今住んでいる、生活に利用している土地や家屋なら続けて所有してよいのか、この部分の詳細については本の中でも説明が無いように思いました。
たびだち101号の記事では東京においても普通のマンションなら持っていても生活保護が受けられる可能性がある、家屋は土地が広いと基準額に収まらないケースもあると書かれていましたが、具体的な数字では示されていませんでしたので、個別のケース毎に相談する必要がありそうです。
(本に書いてあった厚労省のホームページを確認すると、「・持ち家がある人でも申請できます。・利用しうる資産を活用することは保護の要件ですが、居住用の持ち家については、保有が認められる場合があります。まずはご相談ください。」と書いてありました)

ひきこもりに関しての私の疑問の一つ、「働けないことを証明しないと生活保護が受けられないか」というとそうではないと著者は言っています。
大手新聞に「資産があったり、働けるのに働いていなかったりすると、保護には至らない。生活保護を受給するには、資産は役所から調査され、健康問題などで働けないことを証明しなくてはならないからである。」と記事が掲載されましたが、これは誤りで、「働けないことの証明」などなくても、資産と収入が乏しく、他者から経済的扶養を受けることが出来なければ生活保護は受けることが出来ると著者は言っています。

この他にも、よくある質問として、「現金や貯金があると利用できませんか?」「定額ですが収入がありますが利用できますか?」「住んでいる家がなくても申請できますか?」「借金があると生活保護はうけられせんか?」などの例をあげて解説してくれます。
私がびっくりしたことは、生活保護申請後に生活のために借金をすると、それを収入とみなされて生活保護費減額となるので注意しましょうということです。
申請後の生活費が足りなければ、食料支援や貸付金交付などを福祉事務所に相談すれば親身に相談にのってくれるそうです。

本書は、生活保護の制度を設計する側、制度を運用する側の目ではなく、制度を利用する側に立ってノウハウを教えてくれるものだと思いました。
とても読みやすい本です。著者の実経験のところは小説を読むような感じです。興味のある方は一読の価値があると思います。  A男

書名 : わたし生活保護を受けられますか
著者 : 三木ひとみ
出版社: ペンコム(インプレス)
発売日: 2022/7/7