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【2】「銀河鉄道の父」(門井慶喜著 講談社)を読んで
        会員Y

四戸智昭先生が薦めて下さった本、「銀河鉄道の父」を読みました。
「銀河鉄道の父」とは、宮沢賢治の父、政次郎のことで、父と息子を中心とした家族の話です。
胸がざわざわしながら読み、四苦八苦しながら要約しました。本のことが伝わると嬉しいです。

入院した賢治に付き添い、かいがいしく世話をする政次郎に、見舞いに来た祖父は言います。
「お前は父でありすぎる。わしは帰る、もう来んぞ、店がある。甘やかすな」
たしかにそうかもしれない。だけど心から満足しているし、悪いこととも思えませんでした。
妙法蓮華経を読み、農民の苦しみの側に立つという賢治を、逃げていると理解して、モラトリアムを許容し、進学を認め、金の無心にも度々応じる政次郎のジレンマ。
賢治が来れば、高価で体に良いものを、こっそり荷物の底に押し込んでしまいます。
我ながら愛情が我慢できない、介入せずにはいられない。
父親になることはこんなにも弱い人間になることか、と思い知ります。
賢治は昔から性格的に大人がだめで逃避として童話を書きましたが、根本の理由は父の大きな存在でした。
「…おらは、お父さんになりたかったのす」
父のようになれる見込みは、みじんもないけれど、童話なら生めると考えました。
創造している時だけは、政次郎のような父親にもなれたのです。

詩集を出しても後が続かず、不安な賢治を励ます父。やがて賢治は病で寝込みました。
「才能があると思い込んで教師の仕事を辞め、お父さんには迷惑かけてばかりです。 机に向かえません。報いです」
思わず賢治の頬を叩き、「甘ったれるな。その程度で諦めるのか。ばかめ、ばかめ」
この期に及んでもなお息子を成長させたい父親の業。
「人は寝ながらでも前が向ける。本当の詩人なら何度でもペンをとるものだ」
「んだすね」
賢治が書いた 雨ニモマケズ、風ニモマケズ…。

病は回復せず遺言を残しました。
「妙法蓮華経を1000部作ってみんなに差し上げて下さい」
「えらいやつだ、お前は」という父に、「おらもとうとうお父さんにほめられたもな」
ウソだ。数えきれないほどほめたぞ…。
本作りは楽しく、打ち解けた話ができたようで、政次郎はふと改宗しようかと思うのでした。