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楠の会だよりNo.185号(2017年11月)記事より

金木犀の香りが街中に漂っていたのも束の間、日ごとに秋が深まっていきます。気候の変動が激しいこの頃ですが、皆様お変わりありませんか。 ==============================================

<12月の講演会案内>
講演会 引きこもりを考える
 ~引きこもりの現状とそれからの未来をみつめて~

 日時:平成29年12月9日(土) 14時~16時
 場所:メイトム宗像 101号室
       (宗像市自由ヶ丘7-31-7)

 講師 佐藤 武 先生
    (佐賀大学保健管理センター センター長)


NPO法人 「丘の上の街」主催自立支援活動セミナーの第一回講演会です。参加費無料ですので、ぜひご参加ください。
 
   講演会のお申込み・お問い合わせは
   080-3991-7778 NPO法人 丘の上の街 花田
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<今月の投稿から>

KHJ東京大会に参加して   サポーターF・S

(1)「楠の会」サポーターになった 
 ほぼ1年前、私が「楠の会」にコンタクトをとったのは、近親にひきこもり風の気になる状態の者が2人いたためだ。
このうち1人は、現在、体調がいいらしく比較的元気に作業所に通っている(らしい)。
もう一人は、筋金が入りの医者嫌いと聞かされていた年長者で、自分の体の不調を放置し続けて、救急搬送で入院した時には、基礎的な健康状態に深刻なダメージを受けていた。
一進一退の治療を数か月続けていた彼は、今年になって、あっけなく他界してしまった。
医療を遠ざけていることに気をとられていたが、実は「ひきこもり」と考えるべき人であったことが、亡くなった後で了解され、それなりに近くにいてもよく見えないのが「ひきこもり」であることを痛感させられた。
そんな体験も重ねながら、私は「楠の会」のサポーターになっていった。
カウンセラーとして仕事をしている身ではあるが、ひきこもりへの対応は、未知の世界であったことから、自分の勉強のためという思いもあった。

(2)「生き方の多様性」とは   
今回、10月28・29日の東京大会への参加という機会にめぐまれた。 参加してみると、真剣で気迫に満ちた意見と様々な個別の体験・事情が、次々に耳に入ってきた2日間であった。
それらを今もって自分の中で消化できず、満腹感いっぱいの状態が続いている。
そのなかで、印象に残るのは「生き方の多様性」という言葉だ。
このことばについて、ここで頭の整理をしてみたい。
大会のテーマ、『つながろう~生き方の多様性を認められる明日(地域社会)をめざして~』にも出てくるこの語は、人のもつ見栄や誇り、つまり価値観のことを言っていて、他者の価値観に寛容でありたいし、他者からも大らかに対応されて生きていたいとの思いを表現しているのだと思う。
しかし、この社会を生きる方法がそう多くはないのも現実で、どこかで稼がないと生きていけないのだから、ひきこもる息子や娘に対して、親として何かの手立てをと心配するのはあたりまえだ。
今、親のこんな心配は、親亡き後に向け、ギリギリの線(65歳以降平均余命を全うするまでの生活費として2000 ~3000万円必要)が具体的に提示されて語られている。
親の財産の洗い出しの後、親子の話し合いと了解のもと、収入を少しでも増やし支出をできるだけ減らす工夫が求められているのだ(2日目分科会「ひきこもりの家族のお金を考える」)。
そんな厳しい現実のなかで、しかし、ギリギリの実情を生きて行くことを了解すれば、そこに「生き方の多様性を認める」関係が開けてくるということかもしれない。
思えば、私たちはどうしても欲張りで、見栄や誇りが捨てがたい。
それがその人の生き方だから当たり前なのだが、当人のもつ価値観を他者(子ども)に求めて突き進まない自制心をもち、さらに、より広い関係の人々を縛らない大らかな配慮が意識的になされる時、風通しのいい人の関係や社会ができていくのだろう。

(3)「生き方の多様性」を先導する人々   
生き方の同質性を強要するこの社会(その典型として「選択的夫婦別姓」への不寛容さ)の制度や人々の言動が息苦しくてたまらない、と憤りの発言をしていた元当事者のことが思い出される。
わが社会の多様性の少なさが新時代の技術開発の遅れを招いているとの主張などを聞くにつけ、この社会を本気で変えていくのは、ひきこもりの当事者の、存在そのもの、身体をはった主張なのかもしれないとも思う。
だとすれは、彼ら・彼女らは時代の先端に立つ人々だ。
当事者のそばに立つ、サポーターの役目の重さを改めて考えずには、おれない。

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<今月のトップ記事>

10月の講演会を終えて

先日10月14日の講演会「ひきこもり長期化・高齢化の打開に向けて」には大勢ご参加いただき感謝申し上げます。
主に福岡市内の方の参加が多かったのですが、久しぶりにお目にかかる懐かしい方もありました。
それにしてもひきこもりというテーマがいかにわかりにくく、解決策もわかりにくい大変な問題なんだと改めて思ったことでした。

実は講演会が終わった後、副題の“長期化高齢化を打開する”、というテーマに触れていなかったのではないかという質問を受けました。
確かになぜ今、長期化高齢化に医療なのかの説明が不足していました。改めてその説明をしてみます。    

 社会へつながるパイプの一つとして医療の勧め

長年会員になって親の会や講演会にも参加されている方、あるいは参加が少ない方,その双方になかなか動きがないケースがあります。
ひきこもりの医師斎藤環氏は始めから医療につなぐ提案をされてきました。
しかし一般的に家族がひきこもりという事象にだけ目を向けていると、すぐに医療という発想にならないようです。
わが子に精神病とは不治の病のようで受け入れることに戸惑いがあるのかもしれません。
あるいはどんなお医者さんがいるのかもわからなくて探すのもおっくうになるのかもしれません。
しかしそうこうしているうちに年月は容赦なく過ぎていきます。ただ子どもが暴言暴力をふるい、親が困らせられると、医療の門をたたくことに躊躇しなくなります。それは意外に結果として悪くはない、という実例を実はかなりたくさん聞いてきました。
精神科のお医者様はほかの医療と違って、単に切ったり貼ったりの技術ではなく人の心を扱います。
心の問題は日常茶飯事から心理学哲学までの広がりを持つ最も人間的な領域です。
そのことに関係があるのかいい先生がたくさんいらっしゃいます。
その上精神科医療もほかのテクニカル分野と同じく世界的規模で日進月歩しており、お薬も副作用が少なくて効果を上げているものが出てきました。
いいお医者さんにめぐりあい、あったお薬を使って心身ともに楽になったところで医療から離れ、社会参加をされている方がたくさんあります。
あるいはお医者様をいろいろな問題の相談者として、お薬を使いながら仕事を続けている人もよく聞きます。せめてどうにもならない状態で停滞しているケースには医療の専門家の門をたたいてみることを考えてみてはどうか、そうすれば「長期化・高齢化を打開する」ことになるのではないかというのが今回の講演会の趣旨です。

今回は新進気鋭の加藤隆弘先生(九州大学病院)に現在の精神科医療についてお話いただきました。たっぷり1時間半の講演の簡単なまとめですが、よろしければご覧ください。 

講演会「ひきこもり長期化・高齢化打開に向けて
~医療から見たひきこもりへの多角的アプローチについて~」要旨
 


   講師:加藤隆弘 先生(九州大学病院精神科神経科特任准教授・精神科医) 

外国でもひきこもりは問題となっている。
英国の医学辞書にも「ひきこもり」は記載されている。
10年前、シンガポールは20歳で徴兵されるのでひきこもりは存在しないと言っていた。
しかし今は大問題となっている。原因はインターネットやゲーム機の普及などの社会変化が影響しているのかもしれない。
ひきこもりには精神疾患が認められることが多くある。
2015年の加藤先生の調査ではひきこもり者22例中15例で何らかの精神疾患が認められた。
又、2010年のひきこもりガイドラインでは長期化事例や対応に苦慮する事例では精神医学的診断を評価に加えるべきであると指摘している。
(報告者注:精神科医の加藤先生の調査だからこのような結果になったのか、臨床心理士がまとめると違った結果が出るのか、知りたいところだ。)
精神疾患の症状としてのひきこもり様現象としては次のような状態がある。
統合失調症では、幻覚、妄想、思考の障害、感情の鈍麻、意欲の低下、社会的閉じこもりなどがあり、ひきこもりとの関連性がうかがわれる。
うつ病では、感情の変化として興味を失い楽しめない、思考の傾向としてマイナスな見方、行動の変化として外見を気にしない・人付き合いを避ける、身体面での変化では身体的な不調や痛みの訴えなどがあり、これもひきこもりとの関連性が疑われる。
医学的な最近のトピックとしては、血液検査で糖尿病、ガン、うつ病・希死念慮などが診断できるあるいは診断の可能性が出てきている。
ひきこもりも血液検査で診断できるようになるかもしれない。
最近は新型うつ病・現代型うつ病とよばれるものがあり、本人はうつの自覚が強いが症状は職場や登校中に限られており、治療としては薬があまり有効ではなく、サイコセラピー・心理療法が必要である。
精神疾患は診断で患者と診断される人と、精神疾患でないと診断される人にきっちり2分される訳ではなく、グレーゾーンの人も一杯いる。加藤先生はひきこもりの人にはこのグレーゾーンの人も多いのではないかと言われている。
一般的に精神科受診は偏見や思い込みが作用して受診しにくいものであるが、九州大学病院では気分障害専門外来を開設しており、軽い気持ちで、気分がすぐれないけれどちょっと見てもらおうと立ち寄って評価できるようになっているそうだ。
今、加藤先生はメンタルヘルス・ファーストエイドのプログラムを立ち上げようとされている。
「こころの応急処置マニュアル」である。
ひきこもりの人が最初に支援を受け始めるまでの期間は4年かかっている。
ひきこもりの家族がいるけれどどのように対処すればいいのか、そのためマニュアルを作成されようとしておられる。
平成31年にはプログラムの効果検証を終える予定になっている。その時はまた先生のお話を伺いたいものである。

今回の聴講者には講演会終了後にアンケートを提出して頂いた。その中からいくつかを選んでみる。
・今日の医学部の先生の話はひきこもりは必ず何らかの精神疾患にかかっているという条件でまとめてあった。各家庭の個人の問題は十人十色でそれぞれのパターンに分けて、ひきこもり本人がどのような対応を取れば立ち上がれるかを考えてみたいと思います。
・九大病院が実施される「家族向けひきこもり教育プログラム開発研究」に参加したいと思いました。
・5年ほどひきこもっている娘がいます。無理に病院に連れて行ったこともあって今は医療不信、薬拒否、全く病院とつながっていないし、これからも無理のようで。孤立して‥でも怖いきついと外に出られません。苦しいです。こんな人には医療は・・・。
・ぜひ研究を進めて早く血液検査で分かるようになってほしいと思います。ありがとうございました。
・介護保険の利用者の方と関わることが多いのですが、息子さんや娘さんがひきこもりの長期化しているケースに多く出会います。サポート方法があればと思い参加しました。
・楠の会の存在をきちんと知ることができました。こういう会に親御さんが参加しておられるひきこもりの方はとても恵まれた存在ではないかでしょうか。こういう会にも何も参加していない家のひきこもりの方が気遣われます。    
                 2017.10.21  A男


今月は他にも素晴らしい投稿記事があります。ぜひ会報ページをご覧ください。      

 

福岡「楠の会」支部会だより

数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、楠の会だよりNo.185号をご利用ください。

★ 福岡の集い10月20日(金)(あすみん)  参加者女性6名、男性1名

今回は、NHKビデオ「ひきこもりからの回復」第3巻「あなたは一人じゃない~様々な支援の形~」を見ました。
一つは横浜での取り組みで特色は来所した人たちを就労など一歩先の支援につなげたあともフォローを続けていく継続支援をやっていること。
二つ目は秋田県藤里町の取り組みです。まず働いていない人の実態調査を、民生委員や社会福祉協議会など地域資源を使ってデーター化し、施設を作り、スタッフの養成をし、社会から退いている人たちが自然に外へ踏み出せるように本人たちの心情をくんで介護要員の募集のチラシを配るなど工夫されていること、そして本当に彼らが老人の多い町興しに力を発揮していることは理想的な救済方法ではないかと思いました。
今青年層だけではなく高齢者にも孤独な人が多くなっています。
社会福祉協議会はこのような人たちへの救済に一番近い組織ではないでしょうか。
福岡でも社会福祉協議会にこのような取り組みをお願いいたします。
三つ目のグループは本人たちが自主的に集まり、仲間との触れ合いの中から自分自身の生き方を考えていくという「庵(いほり)」の紹介でした。
本人が仲間と集うことがまず難しい、またたとえ数回集うことができても長く続けていくことが難しいと思われるのに、それがここまで大きく力強く活動することができているのを見て、彼らに希望を託すことができました。
本人たちでないと生まれないアイデア、まだ姿の見えない人たちの席を設ける、という工夫など今後の活動にエールを送りたいと思います。ひきこもり新聞の編集者もいましたが、彼らがひきこもりからの脱出の壁を低くしてくれることを心から応援していきたいと思います。
それにしても近頃親ではなく本人のきょうだいや親類の方がお見えになることがよくあります。長期になって親も年を取り、どうにもならないというあきらめや疲れで放置されている弟や甥・姪などを心配しておいでになるケースです。
長期化高齢化の問題がまずます顕在化してきたということではないでしょうか。 (F)  

★ 筑紫野の集い 10月11日(水)(カミーリヤ)参加者/女性7名

当日付けの毎日新聞の記事「21都道府県ひきこもり調査」をコピーして持ってこられた方がいましたので皆でその記事について話し合いました。
共同通信のアンケートで今年6月~9月に47の全都道府県にひきこもりについて把握状況を尋ねた結果、4割超の21都府県が独自に実態把握に乗り出しているそうです。
21都府県の内、調査済みが18都県、調査中とこれから調査をするが3府県。21都府県の内,人数を回答したしたのは12都県で、40歳以上を把握しているのは9県、その9県の中で5県が40歳以上が39歳以下を上回っていました。
「長期化、高齢化」への危機感がうかがえると書かれています。内閣府も昨年9月のサンプル調査で、ひきこもりが全国で54万人に上ると公表しましたが、40歳以上は対象外で十分に実態把握がなされていません。
また記事の中では国の支援が遅れている中、岡山県総社市の独自の取り組みが紹介されていて、「ひきこもりは社会全体の課題だと認識できるかどうかだ」と結ばれていました。  
その後、各家庭の近況を話しました。