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楠の会だよりNo.264号(2024年6月)記事より

ひきこもりと
   「アタッチメント・トラウマ」
「ひきこもりと家族トラウマ」(服部雄一著)より

先月号で話題にしました「トラウマ」について、いきなり最後の結論を出しましたが、やはりそこへ至る過程にそうかもしれないと目に留まったことがありました。
特に注目したいのは、なぜひきこもりがある時期からいきなり増えたのか、そしてなぜこんなに回復の方法が困難なのか、と言う点です。
これまでに専門家の先生方がひきこもりについて研究を公にされています。
ただひきこもりの原因については、様々な要因でと言うのが通例で、原因を追究しないことになっています。
勿論これまで斎藤環先生をはじめ、専門家の研究を目にしてきて、大きな輪郭は理解してきたと思います。
しかし今一つ痒いところに手が届かない思いの中で、ふと目に留まったのが、もう忘れていた服部雄一先生の本の中のアタッチメント・トラウマです。
その言葉に目が留まったのはなぜか、その周辺をお話ししたいと思います。
〇原因捜しは家族の疲弊を招く?
ひきこもりが増えた要因として、戦後の社会的情勢の変化による家族の変化が大きな要因であることは学んできました。しかし家族の問題とするについては、問題があったのではないかと思いました。家族自身が罪悪感にとらわれ、疲弊する恐れです。しかし私たちは、四戸智昭先生のご指導で、共依存をテーマに家族関係について学び、自分だけでなく、自分の父や母、そのまた上の世代から続いてきた何かしらのものがあったと言うことを知りました。自分のせいではない、人の力ではどうしようもない縁(えにし)みたいなものがあるんだと。その考え方は家族の疲弊を和らげることができたと思います。
服部雄一先生の見解をご紹介するにあたって、同じように家族の罪悪感を危惧しましたが、今回も敢えて、ひきこもりは「アタッチメント・トラウマ」が大きな要因だという説に向き合ってみようと思います。
〇ひきこもりの大きな要因「アタッチメント・トラウマ」 ( 『』 は服部先生の本よりの引用文です)
『子どもが健康に成長するには親子の絆(アタッチメント)が不可欠と考えられています。‥‥子どもが親と気持ちの上でつながりを持てなかったり、親との絆を失うとアタッチメント・トラウマになります。子どもはやがて誰とも関われない大人に成長したり、親しい人間関係を避けたり、ひどい場合は、別の人格が発生する解離性障害になると報告されています』として、アメリカの心理学者ビバリー・ジェイムスを紹介しています。
「子どもが親との関わりを持てない場合、子どもは自分の考え、感情、願望を抑えて、親の保護を引き出すような適応行動を始める。‥‥子どもは過度に「良い子」になったり、子どもに無関心な親を楽しませたり、困っている親をお世話したり、反応のない親をわざと困らせたり、子どもの世話をしない親を上手に操ったりする…(中略)…子どもは親の保護と関心をうるために自分の考えや感情を無視しなければならない」
〇親に自己表現できなかった子ども
服部氏は、クライアントの89%は親に自己表現できなかった子ども時代を過ごしている。彼らは親に本当の自分を見せず、親が気にいる「自分」を作って生きてきた、としています。
『親の)感情的ネグレクトとは、「子どもに関心を払わないこと、つまり無視。多くのひきこもりは感情的表現が乏しく、コミュニケーションの欠けた家庭で発生しています。この環境に、さらに感情的虐待と学校のいじめが加わります。こうした家庭では衣食住は満たされているものの、親に子どもの気持ちや考えを理解する習慣がなく、子どもの愛されたい、理解して欲しい、認めてもらいたいなどの感情的要求が無視される』と言います。
〇子どもたちたちは感じていた
『多くのクライアントたちは、幼稚園にあがったころ、自分は他の子どもと何となく違う、子どもの仲間に入れなかったと言う経験をしています。対人関係で目に見えない壁を感じていたのです。人間への壁を隠しながら、表面的な人間関係を作ったクライアントたち、彼らの背後にアタッチメント・トラウマがあります。私の観察では、ひきこもりはアタッチメント・トラウマを次のような形で体験しています。
  1.誰とも親しくなれない
  2.対人関係で緊張する
  3.自分を抑えて相手にあわせる
  4.感情をうまく表現できない
〇子どもの回復はどこにあるか
アタッチメント・トラウマはひきこもり自身にも気づいていない場合が多く、その事実と向き合うことを嫌がります。しかし、回復したクライアントは親子関係がひきこもりの原因だったと語ります。‥‥(略)…
アタッチメント・トラウマを理解した時に、クライアントは自分がなぜひきこもるのかを理解できます。ひきこもりは親子の絆がないために、人間に安心できず、その緊張感や恐怖からひきこもるのです。この問題を理解すると、ひきこもりは「新しいアタッチメント」を作れば治ることがわかります』
〇発達障がいという区分
以上の中で、子どもの成長期を思い返して、思いあたることはなかったでしょうか。ただ、今はひきこもりのほかに新しく発達障がいと言う区分もできました。子どもには生まれつき発達の偏りがあると言うケースは、アタッチメント・トラウマとは無関係かもしれません。この先に服部先生は回復への道筋を語っておられますが、次回に取り上げます。
※トラウマについての新しい解説を、会に参加していただいている臨床心理士のT・Kさんに寄稿していただきました。会報265号に掲載しておりますので、併せてご覧ください。(記 吉村)

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今月の < 投稿 > はお休みです

なお、当ホームページに「楠の会だより投稿」のサブページを設置しました。
こちらの方もご利用ください。
投稿の一部を掲載しています。→楠の会だより投稿    

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福岡「楠の会」支部会だより

数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、「楠の会だより」をご利用ください。

★福岡の集い 6月16日日)14:00~16:00 (あすみん) 参加者 8名 (男性 3、女性 5 )

〇 いつものメンバーが集まりました。ここで一つのテーマが見えました。一応普通の生活ができているが、就労は勿論、家族以外に人との関わりがないというケースをどうするかということ。
仕事するように勧めたり、支援の窓口に行くことを勧めたりすれば二階に上がるとか親を避けるようになるが、それをしなければ、親のお金の範囲で生活していける。ただこの状態がいつまでも続くわけではないことを親は心配している。本人もわかっているはずだが考えないようにしているのだろう。
お一人のお父さんは、いつかは自分から就労するのではないかと期待しながら年月を重ねたが、未だにそれはなかったと。

〇 このことから言えることは、やはり何か仕掛けていかなければならないだろうということ。今年度楠の会が計画している本人たちが出品する展示会はその試みでもあることを説明。
ただ皆さん、本人は出品できるものがないと。そこでお一人ずつ家で何をしているかをお話ししていただくと、 いろんな案を出し合うことになりました。
和服をリフォームすると言われるお嬢様にはその作品を。料理をしていると言う方には得意料理を写真に撮り、工夫している点等のコメントを入れたパネルを作る案。ゲームしかしていないと言う方には、得意な、又は今のめり込んでいるゲームの紹介、何処が好きなのかコメントを添えて写真パネルにするなどのアイデア。絵を描くお父さまのお話からは、息子さんには写真を出してもらえるかもと。
写真の話から植物園で見たという時計にそっくりな時計草やジャカランダの花のことなどに話題が移って楽しく終わりました。 (Y.F)

★宗像の集い 6月19日(水) 13:30~16:00 (メイトム宗像) 参加者7名 ( 女性4 ,男性 3 )

① 山口大学山根先生講演 「市を中心とした支援体制の取組みについて」( 25分視聴 )
講演内容の紹介
山根先生は公的ひきこもり支援の場で活動した経験から、話を聞いて頑張ろうねで終わり勝ちな当時の状況や、連携と称して他機関を紹介して支援終わりなどの従来のひきこもり支援から脱却する必要を感じました。山根先生が始めたのは、両親の相談を受けたあと、ひきこもり心理基礎教育を両親に実施、親と子供のコミュニケーションが回復したあと、本人相談、本人の居場所参加を経て、社会参加までを切れ目なく支援できる体制を整えられました。私が特に素晴らしいと感じた点は親への心理教育です。
親と本人との関係、社会と本人との関係に問題があるとしながらも、本人へのカウンセリングを重視する専門家もおられます。本人はカウンセリングで回復したとしても、親が今までと変わらなければ、社会が今までと変わらなければ、何れ元に戻るのではないかと、私は疑問を持っていました。
山根先生は親への心理教育を出発点に持ってこられています。さらに、福祉関係者、民生委員、一般市民をSDS開発講座講演会に招いてひきこもりについて考える機会を設けておられます。社会にも広くひきこもりを理解してもらう活動が、「SDS支援システム開発講座」ではないかと、思います。山根先生のSDS支援システム開発講座が私の疑問を解消してくれます。(Y A)

② みんなで話し合い
a: 子どもは普段は元気でスーパーとかへは自由にでかけます。家の手伝いもやってくれます。しかし、仕事のことや将来の事など深刻な事を話しかけるととたんに硬い表情になり不機嫌になります。一方、この集いで聞いたお話で、民泊の部屋の片付けを親子一緒にやる仕事を見つけてから子供さんが生き生きと働いていると話される方がいました。それまでは家の手伝いはやってくれるが、仕事には就けなかったと言っておられました。うちでも子供の特性にあった仕事であれば動き出すと思いますが、何が悩みなのか、何が得意なのかそこのところをなかなか聞き出せないでいます。
b:うちは10年ぶりに悩みを打ち明けてくれました。
c:うちは20年前のいじめの事を打ち明けてくれました。信じていた親友の裏切り、自分への無関心に気づいた時はショックだったらしいです。親友の裏切りはトラウマになりやすいと聞きます。うちに限らず、どこのおうちでもきっと心の内を打ち明けてくれると思いますよ。 (A男)

★福岡東部の集い 6月22日(土)13:30~16:00(コミセンわじろ) 参加者5名( 女性3、男性 2 )

〇 前回より参加者は増えましたが、やはり梅雨入りが影響しているのでしょうか。いつもより少なめでした。勿論皆様個々に所用や体調等によって仕方のない事ではあるのですが、支部会としては気になるところではあります。今年は支部ごとに講習会なども考えていますので、会員さんに興味を持たれる企画ができればと考えていく所存です。

〇 今回の出席者は少しユニークな顔合わせになり、若い方たちの話を多く聞くことが出来ました。話題の中心は「生きづらさ」についてです。老若男女の「生きづらさ」が聞けました。物静かに。前向きに。滔々と。
生きづらさの本質は本来の自分と社会で生きる為に作り出す自分とを両立させなければならない「不本意」にある事に気づかされた次第です。親の会の立ち位置はそれを浮き彫りにする力をもっているのでしょうか。

〇 彩り豊かな人生観が飛び交うのもこの会の醍醐味です。これからもこの有意義な時間の共有を大切にしたいと思いながら「こみせんわじろ」を後にしました。  (H ・K)


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