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楠の会だよりNo.257号(2023年11月)記事より騙されるな人は何か一つぐらい誇れるものを持っている。 何でもいい、それを見つけなさい。 勉強が駄目だったら、運動がある。 両方駄目だったら、君には優しさがある。 夢を持て、目的を持て、やれば出来る。 こんな言葉に騙されるな、何も無くていいんだ。 人は生まれて、生きて死ぬ。 これだけでたいしたもんだ。 ビートたけし著「ビートたけし詩集 僕は馬鹿になった」祥伝社黄金文庫・生きづらさ講演会資料より) 令和5年度福岡市市民講演会 生きづらさを抱える若者への理解と支援 ~四戸智昭先生(福岡県立大学大学院)の講演ご紹介~ 抜けるような秋晴れの10月10日(火)、福岡市精神保健福祉センター主催のひきこもりを理解する市民講演会「生きづらさを抱える若者への理解と支援」を聴講しました。 講師は四戸智昭先生、お久しぶりにお目にかかれるのも楽しみでした。 考えてみればコロナの3年間のあと、世の中が変わった、それを誰もが感じているような気がします。 講演会のテーマである「生きづらさ」と言う言葉もよく目にします。 死を身近に感じるコロナウイルスへの恐怖、予想外の戦争が勃発し、何の罪もない幼子も誰かれなく殺されるおぞましさ、コロナ自粛によって職を失った人たちの困窮など、これまであまり目にしなかった闇の世界がメデイアを通して迫ってきて、世の中が怖いというひきこもり的心性が身近に感じられるようになったと言えないでしょうか。 〇「生きづらさ」とは 先生のお話はまず不登校の増加が著しいことから話されました。 まだ世の中に慣れない若い世代が敏感に何かしら腑に落ちないものを感じているのでしょうか。その、生きづらさとは何か、定義が以下のように述べられています。 「生きづらさ」とは、自分自身が抱える苦しみや辛さのことです。原因があいまいで他者と共有しづらく、個人で抱え込んでしまうしんどさに対して使われます。例えば、「自分は何かうまくいかない」「周りから理解されず孤独だ」といった感情や思考が生じた場合、「生きづらさ」を感じることがあります。 (当日の資料より 関西学院大学教授 貴戸理恵「子どもを苦しめる生きづらさの正体(1)」) ”つまり、「生きづらさ」と言うものは、主観的なもので他者にはなかなかわかってもらえない。理解してもらえない。理解してもらえないところに、また「生きづらさ」が生まれてしまいます。”と四戸先生はコメントされています。以下当日配布された資料に沿って簡単な要約を試みてみます。 〇生きづらさの背景 生きづらさの背景に、アダルトチルドレンの問題として、幼少期に養育してくれるはずの親や家族との間で、何かしらの心的外傷(トラウマ)を負い、大人になっても生きづらさを感じ、悩み苦しんでいる人がいる。その他現代の社会で浮上するのが、あるがままの私と現代社会とのずれが生きづらさを生んでいるということ。それは、効率優先(無駄、寄り道を嫌う)社会、仕事や学校での過剰な競争、自業自得と言う考え方をする社会、正しさ(規範)への過剰な迎合をする社会が、生きづらさの背景として考えられる。 〇生きづらさを解消する手段としての嗜癖 先生のお話はこの次に「生きづらさ」の解消に、多様な嗜癖に依存することについてお話しされましたが、そこは省略して、生きづらさと家族の問題についてのお話をご紹介します。 〇生きづらさを感じている家族の特徴は ① 家族が自身の不安や苦痛と言った「生きづらさ」を受け止めてくれる人がいないと思うと、支援や家族会に継続して繋がりにくいこと。 ② 家族の過度な不安や苦痛に伴う焦燥感により、家族が当事者の「生きづらさ」やそこから生じる各種の嗜癖行動(ネット依存など)の受容ができにくいこと。 ③ 家族が当事者の不登校や引きこもり状態に過度に囚われると、当事者を何とかして登校させたり、就労刺激をしたりと言った他者コントロール嗜癖(共依存)が生じやすいこと。 〇家族が感じている「生きづらさ」の例 ① 他人に知られたくない(近所の人がどう見ているか気になる、等) ② 漠然とした不安(ずっとこのまま変化がないのではないか、等) ③ 子どものことが気にかかる(とにかく何をしているか、等) ④ お酒や薬が止められない(お酒や処方薬に頼ってしまう) ⑤ 子どもにどうしたらよいかわからない(なんと声をかければいいか、夫婦で意見が合わない) ⑥ 後悔の念がある(あの時もっと話を聞いてあげればよかった、等) ⑦ 他人と比べてしまう(道行く若者がうらやましく見える、等) 〇当事者が感じている「生きづらさ」の例 ① 家族に理解してもらえない(父親が怖い、母が不機嫌になるのが嫌だ、等) ② 漠然とした不安(他の人と同じように生きなければならない、等) ③ 夜なかなか寝付けない(漫画ばかり見てしまう、等) ④ お酒や薬が止められない ⑤ 学校に行きたくない(学ぶ理由がわからない、何となくやる気がない等) ⑥ 働く自信がない(いじめにあったことがある、上司の機嫌を伺うのが嫌だ、等) ⑦ 人に会うのが怖い(人にどう思われるか考えると疲れる、等) 〇求められているもの ① 家族の生きづらさをそのまま受容してあげる支援 ② 家族の心理的余裕が生まれなければ、家族の変化は難しい ③ 家族の心理的余裕が、当事者の「生きづらさ」の受容につながる ④ 家族と言えども他人同士。子どもを変えるのではなく、子どもが変わるために時間を味方につける 〇日本では弱さを恥と考えている人が多い 最後にコミック「ミステリと言う勿れ」(田村由美著)が取り上げられていて、主人公久能整が、「弱くて当たり前だと、誰もが、思えたらいい」とぽつりという一コマが紹介されています。 漫画の中で、人の心は弱くて壊れやすい、それが当たり前だと言う前提があれば、必要に応じて適切な処置が受けられる。 日本では人の弱さを認めず、恥ずかしいと考えるような風潮があり、カウンセリングの利用が普及していないことを指摘して、先の言葉がつぶやかれているようです。 私もこの言葉は、「生きづらさ」を救うことができる最後の切り札のように思えました。(文責 吉村) ========================= <一言メッセージ> LINE楠の会グループ 会員の皆さんより 〇 10月号, ありがとうございました。手記読ませていただきました。私自身と重なりつい、そうだったなあ、と息子とのやり取りを思い出しました。私にぶつけてくるいらだちの言葉など等。息子のためと思ってしてきたつもりのことが、自分の満足のためになっていたのでは、と反省もしました。読ませていただきながら、右往左往してきたことが無駄ではなかったかもと思いました。 息子はまだまだ苦しみの中にありますが、一緒に暮らすものとして、私だけでも明るい方向を向いていたいと思います。自分を振り返るよい機会をいただいた気がしています。ありがとうございました。(N) 〇 ミーテイングの大切さ、ありがとうございました。(O) 〇 今月の「楠の会のだより」は、お母様の記録もあり、とても貴重なお便りでした。(S) 〇 やっとライン家族会につながりました。よろしくお願いします。 四戸先生のお話、いいお話だったのですね。私も息子が速く外につながれるといいなと思っています。(K) ========================= 今月は他にも素晴らしい投稿記事があります。ぜひ「楠の会だより」をご覧ください。 なお、当ホームページに「楠の会だより投稿」のサブページを設置しました。 こちらの方もご利用ください。 投稿の一部を掲載しています。→楠の会だより投稿 ========================== 福岡「楠の会」支部会だより数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、「楠の会だより」をご利用ください。★福岡の集い 10月16日(月)14:00~16:00(あすみん) 参加者 7名 (女性5 、男性2 )〇 近頃福岡の集いに、他の機関から紹介されて、親の会というものが何をやっているのかという関心を持って参加される方が毎回おられます。 この日、時々参加していただいているB型作業所「かたつむり」を運営しているTさんが参加。実際に当事者の支援をしている支援者のお話は現実に裏打ちされていて、会員の皆さんから出される疑問質問に的確で納得できる応答がされていることに、今更ながら現場の方との接触の大事さを実感しました。〇 現在何らかの外出ができる人たちが自分一人で職安に行ったり、支援団体に行ったりするケースはあまり聞きません。Tさんの事業所では、昼夜逆転を直し、日中は簡単な作業をしてわずかでも自分でお金を稼ぐ体験の場を設定、お昼の食事を無料にしてきちんとした食事をすること、その過程で仲間の存在を知り社会へ目を向け生きていく力を養う。外へ出られない人には訪問看護としてこちらから家を訪問し、親の相談、傾聴を重視した本人へのカウンセリングをするなど、B型事業所は私たち親が知るかぎり、伴走支援として選択したい社会資源であると思いました。 〇 ただこれを利用する場合は医療を受けることが前提の受給者証が必要であることが、従来からネックになっています。しかしこの制度の見直しが進行中というニュースもあります。長年の懸案が改善されるとすれば朗報です。 ( Y. F ) ★宗像の集い 10月18日(水)13:30~16:00 (メイトム宗像) 参加者11名 (女性9 , 男性 2 )① 動画鑑賞(約15分)「30年間の『ひきこもり』をへて出会った『自分の居場所』とは?」 厚生労働省 「ひきこもりVOICE STATION」より主人公は体力的・精神的に学校に行くのが辛くなり、家は出るけど学校に行かない日が続いた。 学校からの連絡でそれが親にバレて、殴られた。 その後、親は理解してくれて、自分も仕事をしなければと、何か仕事を見つけてはやってみるが、長続きしない。 そして30年間が過ぎた。その間一人で出来ることをやって過ごした。写真撮影、キーボード演奏、オカリナ演奏等。 最近当事者会に行くようになり他の人と話せるようになった。発表会でオカリナも披露した。 私は、「働くことがひきこもりのゴールでなく、他の人と会話が出来れば良い」と思う。最近やりたいと思うことは、オープンダイアローグの勉強だ。 ② みんなで話し合い 〇動画について 司会者:ビデオを観ての感想はいかがですか。 A:ビデオ出演者の家族に伝えたい言葉は「子どもが動き出すのを待たなくてよい、親は自分の人生を楽しんで欲しい。親が苦しんでいる姿を見るのは辛いものです」と言っていました。また、「親の会に行って帰って来た親がすっきりしているのはすぐ感じました。そして家の雰囲気も変わりました」と言っていました。 これは楠の会だより10月号に付いていた「ひきこもりが終わるまで~ある母の記~」の内容、子供から一旦距離をとり自分の趣味に没頭した、に通じるものがあると思いました。 〇 その他の話し合い Bさん:20年間部屋に入ることを許さず、話を交わすこともできなかった娘でした。 楠の会に出るようになり、2年ほど前から色々とやって来ました。 多くの支援者の方々に来ていただき働きかけを持っていただいたり、自分の何気ない声掛け・娘を守ろうとする必死の努力が通じたのか、1年ほど前に「病院に連れて行って」と自分から言い出しました。 精神科に通い薬を飲んでいましたが、「もう薬は飲まない」と少し病院行きを休んでいました。 2ヶ月ほど前にまた「病院に行く」と言い出し、今度は作業療法を受けることになり、手芸をやっています。 これが手芸で作ったお財布です。私は感激して持ってきました、回覧して皆さんで見てください。(みんな「とてもきれいにできているね。」「上手ですね。」と拍手喝采でした。) (A男) ★福岡東部の集い 10月21日(土)13:30~16:00 (コミセンわじろ) 参加者4 名 (女性 )〇 時候もよく、いろいろな行事と重なった方もあり、4人だけの集まりとなりました。久しぶりに来られた方が、親亡き後子どものためにしておくべきことが書いてある本を読み、不安を抱きながらも少しでも安心できるようにやっておかなければならない具体的なこと、電気代が滞り電気が止められないように名義変更し、口座開設をしておいたほうがいいと書いてあったとお話しくださいました。 〇 久しぶりに遠方よりもう一人の息子が帰ってくるので家族で菩提寺に行き、今後のお墓のことなど話し合う予定がある。本人も来てくれるといいけれど会いたくないだろうから難しいかもしれないという方。 また、本人が一人になって困らないように他県に嫁いだ娘家族が、私たちの住んでいる近くに住んでくれる方向なので、心強くなると言うお話をされた方もありました。 皆さん、それぞれに当事者のことを心配されて終活を始められているようでした。 〇「変化がなくて」と言われる別のお母さまは、最近では食器洗いをしてくれるようになったと明るい表情でお話くださいました。開催している部屋の間仕切りの隣では「笑い隊」と言うグループの集まりがあり、発声練習が聞こえていましたが、あるお母さんがとても面白い出来事をお披露され、四人で大笑い。きっと私たちの笑いのほうが勝っていたような気がします。少人数ではありましたが、楽しいひと時となりました。(S・Y) ↑楠の会ホームページトップへ |