お知らせ
         
        

        

        

        

        

        

        

             →先月記事はこちら

楠の会だよりNo.249号(2023年3月)記事より

かたわれ月
あけがたの そぞろありきにうぐひすの
 はつ音ききたり 藪かげの道
         金子薫園(かねこくんえん)

ひきこもり8050問題講演会の概要

 主催:福岡県精神保健福祉センター
    一般社団法人OSDよりそいネットワーク

2023年2月26日(土)春日市のクローバープラザにて、上記の講演会が開催されました。
2月に入って間もなくの頃、すでに申し込みを締め切っているとのことでした。
案の定当日は一つの机に3人掛けで空きがない状態でした。コロナの影で潜んでいた多くの人たちの、8050問題への関心の高さに今更気づかされました。
楠の会では10年前になるでしょうか、ひきこもりに関するファイナンシャルプランナーとして有名な畠中雅子さんをお招きしてお話ししていただいたことがあります。
あの頃はまだ親子とも年齢が今より10年若かったので、今ほどの切実感はなかったように思います。
時代も変わって、あの頃と同じ対策もありますが、年金暮らしに重点を置いた対策が以前と大きく違うと言えるかもしれません。
さて今回の講演の内容についてまとめてみました。
当日8枚の資料があり、どれも重要なことばかりですが、紙面の都合上一部分しかご紹介できません。
詳しくは3月の支部会に今回の資料を印刷してお配りしますのでそれをご覧ください。

第一部 8050問題解消に必要な3つの視点 馬場 佳子氏(OSD代表理事 不動産鑑定士)
〇問題の所在があいまい
〇高齢化の持つ意味
〇親亡き後
一般に親は自分たちがいなくなったらどうなるだろうとの不安にとらわれていて、現実的な対応を考えることができなくなっているようだ。まずは一番困っていること、差し迫っていることと、将来の問題とを分けて考える必要がある。また高齢化というのがどんなことか、しっかりと認識することが大事。誰しも自分では気づかないうちに気力や体力、認知能力が少しずつ衰えていく。そのためにも一日でも早くすべきことを実行することである。

実は身体障害者の親たちと比べてひきこもりの親は危機感が薄いと思う。ひきこもりの子は見たところ生きていけるだろうかと言う不安材料がないからだろうか。そうしてずるずると年月を重ねるうちに、親が突然亡くなり、子にとって、「ある日突然」「強制的に」「自立」させられることになる。「親亡き後対策」とは、その「準備」と考えて欲しい。

(編集部コメント)突然親が死亡した時どうなるかは、ドキュメンタリー「空蝉の家」で見るとおり、煩雑で急を要する葬儀の手続きなど全くできない子がごみに埋もれて亡くなっていたり、親の死体と共に生きていた事件もありました。それを避けることが8050問題対策だというのが馬場さんの言わんとする趣旨だと思いました。(以下、昨年3月号会報にて、ZOOMによる「OSD講演会」の記事とほぼ同じですので割愛しました。よろしければそちらをご覧ください)

第二部 親亡き後に備える~遺言の残し方~ 野口 俊彦氏(OSD副代表 弁護士)
人が遺言を遺さず亡くなると、「法定相続」が発生します。「法定相続」とは「ルールに基づく相続」と言う意味です。「法定相続の場合、その方の持っていた財産はまず相続人の間で「共有」の状態になります。その後その共有状態を解消するために「遺産分割」が必要になりますが、そのためには相続人の間で「協議」が必要になります。

皆さんのご家庭では「相続人間の話し合い」は円滑に進みそうでしょうか。
実際は話し合いが進まないか、できないことも多く、家裁の調停・審判に移行することも多いのです。遺産分割協議は必ず「相続人全員」で行う必要があります。相続人の一部を除外した場合、協議書を作成しても「無効」です。

一方、遺言を残すと、相続は「法定相続」ではなく「遺言相続」と言う形で、遺言に沿って行われることになります。つまり、遺産分割協議を回避できます。これは「私的自治の原則」、つまり自分の権利義務関係は自分の意思に基づいて決めることができるという民法の大原則に沿っているのです。
遺言は「私的自治」を果たす最後の機会です。人生の最後に、自分の意思を残してみませんか? ただ厄介なルールもあります。それに反すると遺言はすぐに無効になってしまうので、できるだけ専門家と相談しながら書いて下さい。これを機に可能であれば家族の関係改善の契機に。

以下第三部「今とこれからのお金の話~親子の家計・親亡き後の家計の見える化について~」の報告は楠の会だより249号を参照ください。ここでは省略します。

=========================

< 投稿Ⅰ > 
< 留守をよろしく! >


息子はここ数年自室にこもりがちで、外出も殆どしなくなってしまいました。 私たち夫婦とも顔を合わせるのも、食事と風呂の時ぐらいで、話しかけても目そらし、返事もちゃんとしてくれないことが多くなってきました。
特にコロナ禍が始まってからは、私の仕事も在宅になる事が多くなり、息子は狭い我が家の中に一日中親(特に父親)がいる事に一層息苦しさを感じる様になったのかもしれません。
そんな折、10月になってコロナが少し収まってきたこともあり、たまには家を空けて息子を一人にしてあげてみよう。また、私たちにも気分転換が必要と考えて、夫婦で二泊三日の旅行に出かけてみることにしました。 旅行に出かけるまでは、息子一人で大丈夫だろうか。ちゃんと食事はとれるだろうかなどととても心配しました。
旅行に出ることを妻が息子に話し、家を空けるので、息子に『留守をよろしく』と伝え、 『食事は冷蔵庫の中のものを適当に食べてね』『何かあったらこれを使ってね』と1万円を入れた封筒を渡しました。そして『できたら洗濯機を回して下さいね』とお願いもしてみました。
旅を終えての帰り道、息子がどんな様子で留守を過ごしたのか不安でいっぱいになりました。 帰宅して玄関のドアを開けると・・息子の靴が靴箱から出ているのが目に入りました。『あ!外出したんだ』と夫婦で顔を見合わせてうなずきました。
『ただいま!』と息子の部屋に向かって声をかけ、洗面所に向かうと、お願いしていた洗濯をちゃんとしてくれていました。また、台所を見ると食事をした食器をきれいに洗ってくれていました。
『留守中手伝ってくれてありがとう』『洗い物までしてくれて助かった』と感謝の声を息子に掛けました。 家を離れることについて最初は少し心配していたけれど、留守にしても家事をしっかりと果してくれたことがわかり安心し、また息子を心強く感じることができました。
二泊三日の留守中、普段しない食事の準備や後片付け、洗濯などで煩わしかったかもしれませんが、息子は誰からも干渉されない自分ひとりの時間が取れて、外出するなど案外のびのびとでき、心地良かったのかもしれません。そして、家事の大変さも少しは理解するきっかけになったかもしれません。
いつもべったりと親子が顔を突き合わせていると気づかない事が,今回ちょっと距離を取ることで、お互い気づくことができたように思います。いつまでも子供扱いせず、息子の自立へ向けて、一人の大人として扱うことが大切だと改めて思ったところです。 (O・H)

=========================
今月は他にも素晴らしい投稿記事があります。ぜひ「楠の会だより」をご覧ください。
なお、当ホームページに「楠の会だより投稿」のサブページを設置しました。
こちらの方もご利用ください。
投稿の一部を掲載しています。→楠の会だより投稿    

==========================

福岡「楠の会」支部会だより

数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、「楠の会だより」をご利用ください。

★福岡の集い 2 月10日(金)13:40~16:00 (あすみん)参加者 11名 (女性7、男性 4 )

福岡の親の会は初めての方やお父様の参加があるのが特徴かもしれません。どこも同じですが、一人ではかかえきれない問題をもっておいで下さっています。今、臨床心理士の方が支部会に参加していただいていて、みんなの意見のほかに専門家のアドバイスも受けることができます。以下に今回話題になったことの中で、臨床心理士や他の方から出されたアドバイスをご紹介してみます。

〇 子どもは家の経済状態を考えずにお金を使っているようなのでカードを取り上げることを考えたが、いきなりはよくないと言われた。どうだろうか。
・やはりいきなりは親子関係が壊れるだろう。話し合いの場を設けては。(臨床心理士さん)
〇 働いていない孫のことを理解できない昔気質の祖母の家に連れて行くことはどうだろうか。
・おばあさまだけが理解がないのだから、他の家族でご本人を守っていけるのではないだろう か。新しい場所や会う人が増えるのはいいことなので、実行しては。(臨床心理士さん)
〇 医師の診断を受けるのはどんな利点があるか。
・国の福祉事業(障害年金・訪問看護・家事介護など)を利用する場合は必ず医師の診断書が必 要で、これはほぼ無料なので親亡き後などの備えになる。(臨床心理士さん)
〇 息子を同じ仲間に会わせたいが、楠の会では何かあるか。
① 大抵の場合、親が勧めた居場所にいきなり出ていくことはないだろう。彼らは親の指図を嫌っている。自分で見つけたもの、自分で決めたことは実行するだろう。本人が動くかどうかは、まずは親自身が今までの考え方を変えていけるかどうかに、かかっているのではないだろうか。「楠の会」では宗像と久留米で当事者会を開いているが、福岡市内であれば「よかよかルーム」の居場所に誘うのがいいかもしれない。それもまず親がそこと繋がっていることが必須だろう。
② 自分の子どもの問題は、自分(親)の問題ではない、と考える。親はこどもの人生をコントロールしてはいけない。本人が自分で考え、探して、選んで、動いていくのを、見守るしかない。親としては、本人が自分で行動するのを待つしかない、と思っている。親の期待がそこに見えると、子どもにとっては、強い負担になる。親のモノ言わぬ期待が、本人には、一番苦しいようだ。
〇 ウチの子は、気弱でやさしい。
・だからといって、こども扱いは、しないようにしたい。食事の料理だって、全部用意しているお母さんが多いが、料理は一緒につくって教えるようにしたい。「一人前扱い」をすることを学ぶ場として、親の会に参加したい。親が変わることが、まず必要だ。 ( Y. F )  

★福岡東部の集い 2 月19日(日)13:30~16:00 (コミセンわじろ)参加者9 名(女性 5 , 男性 4 )

〇 この日、風の冷たさは残してはいましたが、日差しは春の訪れを感じさせる温かさ。席に着く前からお話が盛り上がっていて、途中、心理士のTさんの「もうはじまっているのでしょうか」との一言で皆我に返ったという程のなごやかさでした。また、この会は当事者の出席率が高く、今回は3人の方が参加。それぞれにお話しされて、その存在感が際立っていました。
〇 お母さんが帰省中、当事者と弟がしっかりと留守番をしていたお話や、お子さんがお母さんのパーマ代を初めて払ってくれたというお話があり、母親の見守りの確かさと温かさを、感じました。
〇 当事者Aさん // お母さんがお正月に亡くなられた報告をされ、それまで「僕は病気から立ち直ったよ」ということを老いた母になかなか言えなかったが、亡くなる直前にやっと言えたとのこと。
「だけど私は親不孝でした」と涙声で話された時に、皆さんが「いえいえ、最後にお母さんに聞いてもらったのでお母さんも安心なさったでしょう。親孝行していらっしゃる。よかった、よかったですね」と感動を共にしました。
〇 当事者Bさん // 体の異常を感じて検査を受けたところ、思いがけない疾患が見つかりショックだったけれど、今は思い直して食事やその他節制に励んでいるということ。頑張り屋さんです。
〇 当事者Cさん // それまで沈黙を保っていたのですが、会の雰囲気にうながされたようで、口を開いてくれました。作業所での就労の中で、ひきこもり(精神障害も含めて)に対する無知、無理解ゆえの差別といった問題で心の安定にプレッシャーをかけられているとのこと。でも、冷静に立ち向かっておられる様子がよくわかりました。今まで人一倍頑張って辿りついた自立への道は、いずれ充実した未来を切り開いていくものと確信します。お話を聞きながら、皆さんの願いがひとつになっていくようで、心身共に春の息吹を感じるひとときとなりました。 ( H・K )

↑楠の会ホームページトップへ