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楠の会だよりNo.282号(2025年12月)記事より

何でもない会話 なんでもない笑顔  なんでもないから ふるさとが好き (俵 万智)



「割り込んですみません。でも、いつまで待つんですか?」

先月号に、週刊誌「SPA!」から親亡き後の2例をご紹介しましたが、どう思われたでしょうか。
親たちの心配はつまるところ、”親亡き後わが子はきちんと生きていけるか”ということではないでしょうか。

9月に大分でKHJ家族会「大分ステップ」が池上正樹氏(ひきこもり関係ジャーナリスト)をお招きして家族との話し合いがあり、ネット上でその時のことが出ていました。それを読んでいると特に目についた話題がありましたので私たちも考えてみたいと思い、ここに取り上げてみました。
会場から男性が手を挙げておずおずと、「池上さんは今『ちょっと待った方がいい』と言った。でも、いつまで待つんですか? もしその傾向が出なかったら一生待つんですか?子は自分より年下ですよね。いずれ自分がいなくなったら、その後に残る。その不安が常にあると思うんですよね。待った方がいいのは、その通りだと思います。ただ(見通しが)見えないですよね。『いいよ、いいよ』と言って、そのまま自分がいなくなったらどうなるんだろう。いつまで待つのか。その辺はどうなんでしょうか」。
この質問で、和やかだった会議室の空気が少しだけ張り詰めたものに変わったように感じたと書かれています。この記事の記者も同じように疑問を発しています。「内閣府の推計によると、ひきこもりの人は全国に146万人いるとされる。強制的に部屋から連れ出すような「引き出し屋」による対応や、無理な就労は当事者のトラウマになる可能性があり、逆効果であることがだんだんと知られてきた。一方でひきこもりが長期化し、親が80代、子どもも50代と高齢になって困難を抱える8050問題も深刻だ。子どもが社会に戻る日を、親は一体いつまで待てばいいのか―。」(共同通信=佐藤高立)」
“池上さんはこう答えた。「ありがとうございます。とても大事な質問だと思います。(見通しが)見えないというのは、親としてもとてもしんどい気持ちですよね。だけど本人の意思とはまた別のところにあって、自分の状態を最も知っている本人のタイミングや本人のペースを信じるってことじゃないかなと思います。だから本人が自らの意思で、自らの言葉で求めてくるまで待つってことではないかなと思います」。さらに続ける。『待つ』って何もしないで待つわけじゃない。親子での信頼関係が構築されるのは、家庭の中が安全・安心な空気に変わった瞬間。『ちょっとうちの親変わったな』って(子が親に)今まで言えなかったことや、嫌なことは嫌と言えるようになるっていう瞬間なんですよね。そういう何でも言える空気をどう作り出すかを考えていくことが必要で、ずっと待っているだけでいいという話では全くないです。変わることを求めるのではなく、あくまで本人の意思や、本人が言葉にするのを待つということです。親として子どもの潜在力を信じるということではないかと思っています。”(以上ユーチューブより引用文)
以上のようなことは私たちの家族会でも発せられそうな疑問です。いずれにしろ、そんなにすぐに結果が出るわけではないので、家族も忍耐力が必要です。まずは本人に安心感を与えるような対話関係を続けなければならない、これだけでも大変です。家族のほうがドロップアウトしかねないものです。一番難しいのはなかなか状況が良くならない中で家族のモチベーションをいかに維持するかがひきこもり問題で一番難しいと言われています。

斎藤環先生はここで家族会の利用を勧めておられます。「そこで大事な役割を果たすのが、同じような境遇の家族が集まる家族会です。似たような状況で悩んでいる人の話を聞けば、「自分だけじゃない」と安心できるでしょうし、すでに社会復帰に近づいている人に出会えば勇気も出てくるでしょう。相談場所の一つとして有効に活用していただきたいと思います」。(斎藤環著「中高年ひきこもり」より)
会報では会の家族会の様子を毎月掲載していますが、ぜひご覧ください。様々な話題があり、それについてほかの方から自分では思いつかないアイデアが提案されます。そしてもう年月を重ねていますので皆さんがとてもうまく話を続けていくようになっています。何よりもお母さん、お父さんの長年の実績こそ、長い間の忍耐の賜物としてかけがえのない体験談です。このお話こそどんな本を読むよりも参考になるのではないでしょうか。(文責 吉村)

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<投稿Ⅰ 私が手放してみたこと>

最近私が手放したこだわりがあります。
ほんの些細な事ですが、私は台所のシンクの三角コーナーの向きにこだわっていて、息子が時々私と反対方向に置く度に直していました。ある日、そんな小さな事にこだわっていた自分がおかしくて、どっちでもいいかと思うようになりました。

"こだわり"というのは誰もが持っているものです。結婚した後、夫の習慣や価値観の違いに気づきましたし、一緒に暮らしていても子どもと私に違いがあります。育ってきた環境や時代、昔からのしきたりや習慣などが無意識に一人ひとりの身に染み付いていて、それが当たり前だと思ってきたことが沢山あります。私は以前、息子がゲーム中に大笑いする声を聞いてイラッとした事がありました。
「仕事もしていないのに」とか「呑気でいる」という世間一般の思考で、他人に自分の価値観を押し付けてジャッジしていました。
逆に、「笑える事があって良かったな」、「楽しみもあっていい」と思える私もいました。
「そういうこともある」、「その人が選んだことだ」と他人を肯定できればどんなに楽だし平和でしょうか。現代は多様性を受け入れようとする波が広がりつつあります。
「みんなちがって みんないい」ということです。
心配な事は自分で解決する為に動きつつ、一方ではあまり真面目すぎず、時には何でも面白がって笑える自分でいることが自分らしい生き方かなと思っています。(ひまわり)

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今月は他にも素晴らしい投稿記事があります。ぜひ「楠の会だより」をご覧ください。
なお、当ホームページに「楠の会だより投稿」のサブページを設置しました。
こちらの方もご利用ください。
投稿の一部を掲載しています。→楠の会だより投稿    

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福岡「楠の会」支部会だより

数ある支部会だよりからいくつかの支部をWEB編集者独断で選んでいます。他の支部会の状況をご覧になりたい方は、「楠の会だより」をご利用ください。

★筑紫野の集い 11月 12日 (水) 13 : 30~15 : 30 ( 筑紫野市 生涯学習センター ) 参加者4 名 ( 女性 4 )

いつものように1か月間の近況報告をしました。
〇 大野城市の「心のふるさと館」で開催されている「神業の複製アート展」のチラシを持ってこられた方がいて、皆で「いいね」と盛り上がりました。これは、大塚国際美術館(徳島県)所蔵の複製陶板の展覧会で、手でさわれるところが他では体験できない楽しみになりそうです。

〇 Aさんは頑張って働いている子供の報告をされました。仕事場で話せなくて孤独を感じていると言われると、「無口の方が良いと思っている人もいると思う、他の人は良い面もみているから、大丈夫ですよ」と助言をする方がいらっしゃいました。

〇 Bさんは親戚が訪ねてくるので、どうなるか心配だと話されました。親戚の方も当人の事を気にかけておられるそうです。また、話の中で当人のユーモラスな部分を知ることができ、ご当人がきつい時期の話も聞いていた私達は、気持ちが温かくなりました。

〇 Cさんは家の用事を忙しくイキイキとこなしている子供の話をされました。
人とのつきあいが無いのが心配だと言われました。

〇 Bさん、Cさんも当人が仕事がしたいという気があるなら市に相談に行く気にもなるが、今はその時期ではないように思うと話されました。 ( M .K ) 

★福岡東部の集い  11月 16 日 ( 日) 13 : 30~16 : 00 ( コミセンわじろ ) 参加者 7名 ( 男性 1、 女性 6 )

○ 体調が悪く、しばらく来られなかった方が、当事者である息子さんが車を運転して、親子で参加されました。周りの人は見かねて、介護ヘルパーに依頼されたらと言われるが、幸い近くに一人暮らしをしている息子の手助けがあるので、どうにか自分の力で、工夫しながら頑張っているとのことでした。昔苦労した辛さを思えば、どうにか生活していけると。息子さんが、お母さんを終始、守るように言葉がけをしながら優しく接しているお二人の姿を見て、今こそ幸せを手に入れられたのだと思いました。

○ また、別の方は、マイナンバーカードの発行手続きをいつまでもしない息子の様子に、親が代行した方がいいのではと気を揉みながら静観していたら、自分でバスに乗って区役所に行きカードを受け取って来たので、嬉しかったと話されました。

○ 久しぶりに参加された方からは、「近頃、疲れていて集いに行くのを躊躇していたけれど、皆さんのお話を聞き、前向きに頑張っておられるのを知り、パワーをもらった気がした。思い切って参加して本当に良かった」という言葉を頂き、大変嬉しい気持ちになりました。

○ この日を待っていて、久しぶりに会場近くのお気に入りのお店でランチをして、「事故に遭う事なく来ました」とおっしゃる方もありました。

○このところ参加者が少なかったのですが、こうしてお馴染みのお顔が集えた事が奇跡だとしみじみ思いました。( S・Y )

★久留米の集い  11 月 28日 (金) 14 : 00~16 : 00 (えーるピア久留米 )    参加者 4名 ( 女性4 )

〇 今日は久留米市に隣接する鳥栖市で斎藤環先生や林恭子さんなど、有名な講師陣を集めての2日間にわたる大きなシンポジウムがあり、そちらに出席する方があり、参加者は少なかったのですが、話の種は尽きません。

〇 この日、会報に記事を出して下さる臨床心理士のKさんが来てくださり、私たちの話を膨らませてくださいました。特に、腸の働きが実は精神活動に大いに関係すると言うお話は興味深かったです。
腸内で作られるホルモンで心に関係する神経伝達物質は次のとおり。①セロトニン:幸せホルモンと言われ、心を落ち着ける。②オキシトシン:母乳の分泌と関係があり、愛情ホルモン、幸せホルモンと呼ばれ、人と人のつながりを深める。③ドーパミン:大谷選手のような快感や意欲、集中力、記憶力、学習力を高める、というお話。食の重要さ、きちんと食べること、体づくりの大切さをあらためて思いました。

〇 もう一つの話題は、福祉関係者の訪問を受けてもう数年間になるけれど、全く応じようとしないという息子さんのこと。学校時代は運動が得意な活発な子で、今でもダンベルをやったり走ったりしていると言うお話を聞いて、 彼が気に入った目標を持つとしたら、マラソンに出ることなんてありではないだろうかという話が出ました。親がどうにかして事業所につなげようとするのが気にいらないかも。むしろ彼の好きなことをやれるように応援をするということはどうだろうという話に、お母さんも心を動かされたようでした。

〇 弟はひきこもる兄を嫌っていたが、いつの間にか福祉事業所に就職している、そんなものかと思ったと言うお話に心が温かくなりました。

〇小さな姪甥は彼を大好きで彼も小さい者たちが来ると一緒に遊んでいると言うお話。
何の偏見もない子供が好きなのはわかるなーとみんな同感でした。(Y・F )

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